昨日、九州酒造研究技術委員会の講習会にお邪魔しました。
九州の酒造メーカーさんの集まりなのですが、
今回は旭菊酒造の原田社長による講演「火事対策の心構え」
ということでしたので、僕も参加させて頂きました。
2010年5月31日、
漏電が原因で出火、七棟全焼、一棟半焼という
聞く耳を疑いたくなるような、大被害を受けられた旭菊酒造さん。
火災の2ヶ月後の7月には当店主催の試飲会「酒に笑う人生」にご参加頂き、
打ち上げの際「必ず次の造りから復活します。」と力強いお言葉で、
そこにいる皆に逆に元気を与えてくださいました。
そのお言葉通り、現在当店の棚には新造蔵で仕込まれた旭菊が並んでいます。
新造蔵が完成した直後に蔵でお話しも伺っていたのすが、
今回は、具体的に火災が起きると何が大変で日頃から何に注意すべきかという、
貴重な、本当に貴重なお話しを聞かせて頂けました。
5月31日、事務の方が異変に気付き、すぐに社長が消化器をもって駆けつけました。
火は、天井に燃え移り、天井の火を目がけてホースを向けられたそうです。
しかし、すぐに梁が崩れ落ち、これは手に負えないと119番に通報しました。
蔵には「配線遮断機」も「漏電遮断機」も設置されており、
作動はしたものの、その時にはもう発火していていたようです。
消防に通報してから消防車が到着するまで約15分。
本来ならもっと早く着くはずですが、管轄の変更があった直後だったことで
時間がよけいに掛ってしまったそうです。
また、旭菊さんの蔵は入っていくと引き戻るしかなく、
現場まで誘導していくのにも手間がかかってしましました。
しかし、隣人のお宅には延焼することがなかったのが、
蔵を建てた時、先々代が「もしも」の為に、
隣との間にレンガの壁を作っていました。
「火災になって初めて良い仕事をしたんだと知りました」
とおっしゃっていたのが印象的でした。
「お隣に延焼していたら、復活するのは無理でした」
ともおしゃっていました。
鎮火後からのお話しは、聞いているだけでも
頭がパンパンに膨れそうなほど、様々な問題の連続です。
まず、現場検証にとても時間がかかりました。
最終的には出火元の可能性が高い冷蔵庫の「中」か「外」か、そこまで限定。
しかし、検証した結果「漏電」であっても、「原因不明」となるそうです。
その後、「残った酒」「保険」「代理店」「隣人」など、
新たに蔵を建てるまでの問題が続きます。
そして、いざ蔵を新造するとなってからの
「建築確認申請」「食品営業許可申請」「建物登記関係」など、
お役所との関わりでの問題。
約半年で新造蔵で仕込みを始められた、
原田社長の復活への日々を思うと、
胸が締め付けられました。
【残った酒】
は、密閉タンクでタンク一杯に囲っていたもののみ、少量生き残りました。
不思議なことに、もとより美味しくなっていたのも(!)あったそうです。
その他は全て税務署の立ち会いのもと廃棄。
【蔵の片づけ】
にしても、片づけ業者が入れ替わり立ち替わり出入り。
いざ、見積もりを取ってみると高いとことは相場の1.5倍もの金額を提示するところもあったそうです。
「とにかく見積もりをとることは大切です」とおっしゃていました。
【保険に関して】
も納得のいかないことの連続。
そもそも保険の始まりは1879年で、酒造業界のほうがはるかに古く、
また、1996年に保険業法も改正されました。
原田社長も、ほぼ全てのことは先代から引き継ぎ見直していたものの
こと「保険」に関してだけは、全くそのままの状態だったので、
そこで、かなり苦労、苦心されたようです。
「多分、ほとんどの方が自分のところの保険がどういったものか理解されてないはずですので、
見直すことをおすすめします」とおっしゃっていました。
また、酒に関して通常の保険でフォローされているのは、
酒を搾るまでの「原価分」のみ。その算出だけでも大変です。
(その後の講習会であったお話しが「利益保険」。建物や物に対してではなく、
営業停止分の「利益」に対しての保険もあるそうです。)
まず、「保険の見直し」、そして信頼できる「代理店」さんとの関係づくりが
とても大切だと知りました。
【隣人】
今回のお話しである意味1番ショックだったのが、
旭菊さんのご近所の方で、鎮火後ものすごい剣幕で
「早く片付けろ!」と怒鳴りこんできた人がいたそうです。
「世の中はいい人だけじゃないです。」と呟かれていました。
保険の問題もぎりぎりのところで解消され、
(機械関係の保障は、始め0.94%だったものが最終的には5.2%に)
【そして、新蔵建設へ】
お役所とのやりとりの話は、唖然とすることばかり。
「麹室に窓をつけろ」だとか、「冷蔵庫に窓をつけろ」だとか、
「???」な注文を出されたり、
そもそも、一刻も早く建築工事に入りたいのにも関わらず、
許可が最長の34日で下りたり、(実際は許可を34日で下ろして通達が翌日なので35日、、、)
とてもじれったく、悔しい思いをされたのだと思います。
新造蔵は、遮熱材を蔵の上下左右に使い、
機械は、広島の蔵から購入したものや再利用可能なものを使用し、
コンパクトで機能的な蔵になっています。
しかし、麹室が若干狭かったり(とても立派ですが)と
不便な点はあるとのことで、頑張って理想の蔵に改善します、
と、またもや力強いお言葉を頂戴しました。
全てを瀬戸際で乗り越えられた旭菊さん。
昨年の酒に笑う人生の時、原田社長が
「自分の代で良かった。これが私に課せられた役目です。」
とおっしゃっていました。
その強い決意が山ほどの問題を乗り越え、
僅か約半年で旭菊の歴史を再開させることが出来たのだと思います。
息子さんが帰ってこられたのが火災の何か月か前。
昨日も、いらっしゃって講演のお手伝いをされていました。
火災から、復活。そして、更なる理想の酒、酒蔵を追いかける
原田社長の強さを目の当たりにし、
きっと、より力強い旭菊を社長と共につくり、
そして受け継いでいかれることと思います。
昨日のお話しのほんの一部ですし、
実際のご苦労の0.00001%も伝えきれていないと思いますが、
例えば、飲食店さんで「旭菊」を見かけた時、
この話を思い出して、一杯飲んでいただけると幸いです。
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